第3 債権の回収
1 話し合いによる回収
⑴ 請求書や配達証明付内容証明郵便の送付
電話や通常の請求書では効果がでないときは、配達証明付内容証明郵便で請求する。
* 配達証明付内容証明郵便は、以下の事実を証明することが可能になる。
① 内容証明郵便に記載した内容の書面を相手方に送付した事実
② 相手方にいつ送達した事実
⑵ 債務弁済契約書
支払内容を文書化します。
公正証書にした方がよい場合があります。
なお、内容に関しては、事案により異なるので弁護士に確認した方がよい。
⑶ 債務者の財産から支払を受ける
① 相殺する。
② 債権譲渡を受ける。
③ 代物弁済を受ける。
⑷ 債権回収と犯罪
債権者が債権回収をする際でも、犯罪が成立がしてしまうことがあります。注意が必要です。
ア 自力救済は禁止されているので、勝手に債務者の財産を奪えば、窃盗罪又は強盗罪に該当することがあります。
イ 権利行使と恐喝
正当な債権を有していたとしても、恐喝手段(暴行・脅迫)によって弁済を受ける場合、恐喝罪は成立する可能性があります。
この点に関する判例として以下のものがあります。
「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり、且つ、その方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を越えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがある」(最判昭和30.10.14)
2 担保物権と保証制度
⑴ 債務の履行をより確実にする主な制度
① 債務者以外の第三者からも支払を受けられる保証制度があります。
② 判決などの債務名義なしに、債務者又は第三者が提供した特定の財産から優先的に弁済を受けることができる担保物権というものがあります。
⑵ 保証制度
保証、連帯保証、根保証があります。
* 保証と連帯保証の違い
連帯保証の場合、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益がありません。
* 根保証
継続的売買契約や継続的金融取引関係から将来発生する不特定の債権を対象になされる包括的な保証をいいます。
このうち、限度額、保証期間の定めがないものを特に包括根保証といいます。
⑶ 担保物権
よく利用されている担保物権に、抵当権と根抵当権があります。
* 抵当権と根抵当権の主な違い
抵当権は、特定の債権を担保することを目的として設定する権利である。
これに対して、根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する権利です。
3 裁判手続
⑴ 裁判
ア 裁判手続の概略
訴えの提起(訴状を提出する)
↓
被告は答弁書を提出する。
↓
以後、原告被告は、準備書面を提出して主張・反論を行い、必要な証拠を提出する。
↓
証人尋問
↓
結審
↓
判決の言い渡し
↓
控訴
↓
上告
* 訴訟を提起しても判決ではなく、裁判上の和解等の和解で終了することがあります。事案に応じて、証人尋問前や証人尋問後に裁判官が和解を勧告することがあります。
イ 証拠の重要性
争いのある事実は、証拠に基づいて、認定します。従いまして、相手方が争う場合、裁判に勝訴するためには証拠が必要不可欠です。
一般的に重視される証拠は、相手方が作成した書面、相手方が記名(署名)押印した契約書・合意書です。
⑵ 強制執行
ア 債務名義
(ア) 債務名義とは
債権者の給付請求権の存在を公証する文書を債務名義といいます。
*給付請求権…貸金返還請求権、売買代金返還請求権などのことをいいます。
(イ) 債務名義の具体例
・ 確定判決
訴訟を提起して判決が為された後、その判決が控訴などにより争うことができなくなることを、判決の確定をいいます。この確定した判決が債務名義になります。
・ 執行証書
公正証書に執行受諾文言があるもの。
* 執行受諾文言
執行受諾文言とは、直ちに強制執行に服する旨の陳述のことをいいます。例えば、「乙が第〇条の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」との文言です。
・ 確定判決と同一の効力を有するもの
例えば、裁判上の和解における和解調書(民事訴訟法267条)が確定判決と同一の効力を有するものに該当します。
訴訟提起後、裁判所において和解が成立し、これが調書に記載されたときは、その和解調書は、債務名義になります。
注意が必要なのは、裁判外で和解し和解契約書を作成しても、同契約書が債務名義にはなりません。
イ 不動産強制競売
不動産強制競売とは
執行裁判所が債務者の不動産を売却し、その代金をもって債務者の債務の弁済に充てる執行手続です。
注意点
① 換価しても差押債権について全く弁済を受けられないことが見込まれる場合には、強制競売手続が取り消されます。
② 予納金が必要です。
ウ 動産執行
① 差押禁止財産が法定されています(民事執行法131条)
エ 債権執行
① 差押債権の特定
・ 給与債権を差押さえるには、勤務先を把握している必要があります。
・ 預金債権を差押さえるには、金融機関と支店を把握している必要があります(特定方法に関して争いとなっています)。
② 差押禁止債権が法定されています(民事執行法152条)。
⑶ 仮差押
ア 仮差押えとは
金銭債権の支払を保全するために、執行の目的たる債務者の責任財産のうち債権額に相応する適当な財産を選択して、その現状を維持し、将来の強制執行を確保する手段です。
イ 目的
訴訟は、訴えの提起から判決の確定まで時間がかかりますが、それまでに債務者の財産が譲渡されたり、弁済を受けると強制執行ができなくなります。
このような事態を防ぐために仮差押え制度があります。
ウ 種類
不動産の仮差押え、債権の仮差押え等があります。
エ 注意点
① 担保金が必要です。
② 破産されたら仮差押えは効力を失います。
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