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1 顧問弁護士がいる場合のメリット

従業員との間で紛争が生じると他の従業員にも影響が生じ、業務活動に著しい支障が生じる場合があります。
時には、会社の根幹を揺るがしかねない大きな問題に発展する場合もあります。

従いまして、雇用関係のトラブルは、日頃からトラブルになるのを回避する対応が求められます。
この点、顧問弁護士がいれば、日頃から気になることを相談することが可能になり、トラブルが顕在化することを防げる場合があります。

また、紛争になっても初期段階から直ちに相談することが可能になり、迅速に紛争解決への対応を取ることができます。

2 労務管理でよく生じる問題点

⑴ 労働時間の管理

従業員の労働時間の管理方法は、「労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平成13年4月16日 基発第339号)という通達で、詳細に定められています。
この通達には、要旨以下のとおり定められています。

まず、労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適切に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかであるとし、使用者に労働時間を適切に管理する責務を課しています。

次に、同通達は、使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によることとされています。

① 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
② タイムカード・ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

さらに、同通達には、自己申告制により始業・就業時刻の確認及び記録を行う場合の取るべき措置も定めています。

そして、労働時間の記録に関する書類については、労働基準法第109条に基づき、3年間の保存義務があります。

使用者としては、割増賃金請求訴訟や過労死訴訟のリスクを回避するためにも上記通達を意識した労働時間の管理が必要になります。

⑵ 能力不足を理由に普通解雇する際の注意点

就業規則で定める解雇事由に該当するからといって、必ず解雇が有効になるわけではありません。
解雇するには裁判例の集積で形成された解雇権濫用法理が確立しているからです。

解雇権濫用法理とは、使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる、という考え方です。
この解雇権濫用法理からすると就業規則では解雇事由を特段限定して定めていなくても、限定解釈しなければならない場合があります。

従いまして、就業規則に「能力不足」という事由を解雇事由に定めており、その事実に該当する事由が生じたから解雇したとしても、その解雇が無効になる恐れが高いです。

「能力不足」という理由で、従業員をいきなり解雇する場合、よほどのことがない限り、その解雇が有効になる可能性は低いです。

では、能力不足で解雇するにはどのようなことが必要かといいますと、事業主としては従業員の「能力不足」という抽象的要件に該当する事実を把握し、それに対して従業員を注意・指導する必要があります。

また、解雇するには、戒告などの軽い処分を経る必要があると思われます。
能力不足という理由で解雇するには、ある程度時間をかけて注意・指導が必要になりますので、事業主としても多大な負担を伴います。

⑶ 退職勧奨する際の注意点

退職勧奨とは、使用者が個々の労働者の事情により当該労働者に退職を促すことをいいます。
解雇を有効に行う要件が厳しく、また、解雇の有効性が裁判になった場合には必ずしも裁判の見通しが明確ではないので、退職勧奨が利用されます。

しかし、この退職勧奨は、当該労働者の自由意思により雇用関係の終了を促すものですから一定の限界があります。
退職勧奨の限界を超えた勧奨行為は不法行為として慰謝料の対象になりますので、注意が必要です。

また、退職の意思表示も民法に定めがある意思表示の瑕疵・欠缺の規定が適用されます。

従いまして、虚偽の事実を告知して退職勧奨を行った場合には、それによって当該労働者が退職を承諾したとしてもその退職の意思表示に瑕疵・欠缺があるとして無効になる場合(民法95条・96条)があります。

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